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2008年2月 3日 (日)

ラン・ノートルダム大聖堂

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ランスからさらに北へ電車で30分、西フランク王国の首都であったランに到着する。ここはシャンパーニュ、ピカルディ、ノルマンディの3地方の中央にあたる。今回の旅行でとても楽しみにしていたのがこのランの大聖堂である。SNCFの駅を出ると小高い丘の上にある大聖堂が見える。駅前の通りの直線上に、まっすぐに大聖堂の方角へ伸びる長い階段があり、私達は徒歩でそこから登ってみたがかなりヘヴィだった。登った後で気づいたが、小さな登山電車のようなものが町から出ているようで、普通はその電車かバスを利用するようだった。

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あいにく、大聖堂の西正面は補修中で全面的に覆いが掛かっており全く何も見えなかったので絵葉書の写真で代用。

ラン・ノートルダム大聖堂は1150年代着工、初期ゴシックに分類される。ファサードのデザインは薔薇窓を覆う大アーチも3つの扉口のアーチも今だ半円アーチを使用しており、いかにもロマネスクからの過渡期の建築と感じさせる。それでも頂塔を持たない二つの塔、大きな扉口、大薔薇窓や全体のプロポーションは既に十分フランスゴシックの大聖堂らしい。

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塔の上には奇怪な怪物ではなく、可愛らしい牛の彫刻。建造工事で牛が活躍したためと言われている。

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中へ入ると奥に大きな薔薇窓が見えて、微妙な違和感を覚える。あんなところに何故薔薇窓?一瞬考えてすぐに気づいた。なるほど、シュヴェ・プラなのか。シュヴェ・プラとは平らに閉じた後陣のことで、シトー派の聖堂やイギリスでは多く見られるがフランスの大聖堂には珍しい。フランスでは内陣後部に周歩廊を配した丸く閉じるアプスが一般的である。フランスの代表的な風景となっているパリの・ノートルダム大聖堂の後姿、放射状にスラリと伸びるフライング・バットレスは、丸く閉じる後陣ならではの風景なのである。

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ヴォールトを見上げる。今だダブルベイ・システムの6分ヴォールト。シングルベイ・システムの4分ヴォールトが主流になるのは、盛期ゴシック以降のことである。

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立面は大アーケード・トリビューン、トリフォリウム、クリアストーリーからなる四層式、これも初期ゴシックの特徴だ。トリビューンとトリフォリウムの違いは非常にわかりにくいが、トリビューンは側廊の上階で身廊にに対して開かれている部分をさす(ギャラリーとも言われる)。トリフォリウムはさらにその上、トリビューンを開いている2階の上の屋根裏のような部分にあるアーケードのことである。トリビューンと違い、アーケードの後ろにはすぐに壁が来るのでめくらアーチのように見える。もともとロマネスクの建築では側壁を支える為に側廊に2階(トリビューン)を設けるのが通常であったが、ゴシック期になりフライングバットレスという技術が発達したため、徐々にトリビューンは姿を消し、盛期ゴシック期には3層式壁面へと姿を変えていくのである。

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北翼廊の薔薇窓。まだまだ素朴なデザイン。

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身廊から壁面を眺める。しっかりとした大円柱が大アーケードを支え、その柱頭からヴォールトのリヴへと繋がる小円柱に分裂している。この小円柱(シャフト)はそれぞれ3本のものと5本のものが交互に配せられている。実は、この大聖堂に来たかった理由は、このシャフトが織り成す空間にあった。この小さなリングで文節されているシャフトは、まるで天高く伸びる竹のような上昇感を私に感じさせた。ランの大聖堂のヴォールトの高さは約24m、ロマネスクの聖堂でもこれより高いものはあるのだが、この軽やかなシャフトとリングの作り出すリズム感が石の持つ物質性を覆い隠しているように感じられるのだ。しかしながら、日本人である私にはそのように見えるのだが、ドイツ人の研究家ヤンツェンはこのリングの水平性を指摘している。やはり、育った環境というのは大きいらしい。この大聖堂の工匠が竹を見たことがあるとは考えにくいので、おそらくヤンツェンの意見が正しいのだろう。このシャフトを素晴らしいと感じるのは、日本人と中国人くらいなのかもしれない。

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シュヴェ・プラの薔薇窓とランセット窓。

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交差廊部の美しい光塔。

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後陣から大聖堂を臨む。中央の三角状の塔が光塔だ。

ランの大聖堂は古典的な7塔式で完成された珍しい建築である(後に二つの塔が取り壊され、現在は5塔しか立っていない)。7塔とは、西正面と北と南のそれぞれの双塔、そして主廊と袖廊の交差部にかかる大塔(光塔)で、この形式はフランスではあまり顧みられず、ランスでは当初7塔式で設計されたものの結局西正面の双塔のみに終わり、アミアンではもともと西正面の双塔のみの設計であった。フランスでは、ノルマンディ地方などのアングロ・ノルマンのゴシックに大塔への執着が見られるようだ。むしろこの伝統はイギリスのゴシックの特徴となって残って行く。ある意味、初期ゴシックの典型であるランの大聖堂は、フランスとイギリスのゴシックの特徴を併せ持った建築のようにも思える。イギリスは、ゴシック誕生の早い時期にフランスからその技術を伝えられた第一の国であることを考えると、それは自然なことのようにも思われる。

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コメント

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投稿: ブランド 鞄 スーパーコピー 時計 | 2021年12月 1日 (水) 04時13分

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