漁夫の砦
ブダペスト、王宮の丘の上に御伽噺にでてくるような白い七つの塔を持つ回廊がある。「漁夫の砦」という変わった名前の由来は、中世にドナウの漁師組合がここを守っていたからといわれているが、勿論このネオ・ロマネスクの建物が砦として使われていたわけではない。建国千年祭に向けての市外美化計画の一環として1903年に造られたもので、設計はマーチャーシュ教会を手掛けたフリジェシュ・シュレクが担当している(ちなみにハンガリーは日本と同様に姓・名の順番になる)。
とんがり帽子のような形はアジアからやってきたマジャール人の遊牧民のテントを、7つの塔はマジャールの7つの部族を表わしている。これはハンガリー人の祖といわれるアールパードがカルパチア山脈の東から他の6人の部族長達を率いてこの地にやってきたという言い伝えからきている。
写真右側の十字架を頂く回廊は、マーチャーシュ教会の裏手にあたる。漁夫の砦の回廊はこの部分だけデザインが変わるのだが、教会の改修も手掛けたフリジェシュだから、おそらく教会の存在を意識してのことなのだろう。
漁夫の砦の前にはハンガリー初代国王聖イシュトヴァーンの騎馬像がある。この聖イシュトヴァーンは現在のハンガリーの生みの親と目されている。彼がキリスト教を国教としたことにより、アジアから来たマジャール人の国であるハンガリーはカトリックの国として西洋文化圏の仲間入りを果たしたからである。
余談ながら、イシュトヴァーンはシュテファンのハンガリー語読みなのだそうだ。子供の頃に好きだったファンタジーの登場人物がイシュトヴァーンという名前で、それ以来RPGの主人公につける名前はいつもイシュトだった私としては、随分とイメージが違って少なからずショックを受けてしまった。
ここが漁夫の砦の入口。漁夫の砦は1Fは無料だが、2Fは有料となっている。ただ鎖がはってあるだけなので、人がいない朝や夜は無料で入れてしまうのだった。
漁夫の砦は展望台になっている。くさり橋や聖イシュトヴァーン大聖堂、国会議事堂などドナウ川とペスト側の素晴らしい眺望が広がる。こちらは1F。柱越しに見垣間見える風景も風情があっていい感じ。
こちらは2F、少し上がるだけで雰囲気も随分違う。
7つの塔の中で最も大きなもの、アールパードの部族ということかしら。
漁夫の砦は20世紀になってできたものだが、こんな風に見ると中世に迷い込んだような気分になる。
夕暮れ時の砦。美しい黄昏の空に塔のシルエットが浮かぶ。
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