ブダペストのケーブルカー
王宮の丘に建っている19世紀の薫り高いこの建物は、観光客に人気の高いある乗り物の駅。
3つのボックスを階段状に取り付けたレトロでユニークなケーブルーカーの駅なのだ。
シックなカラーリングとレトロな形状に似合わず急な斜面をスルスルと昇降しており、車窓の風景をのんびり楽しんでいる暇はない。あっという間にもう一つの駅へと運ばれてしまう。
斜面の途中にかかる橋の上からケーブルカーを眺める人も・・・。
このケーブルカーは王宮の丘とくさり橋のたもとにあるクラーク・アダム広場を結んでいる。アダム・クラークというのは、くさり橋の建設に携わったスコットランド人技師の名前だ。ちなみにこの広場はハンガリーのゼロ地点、ブダペストから各地への距離はここが基点となって測られるのだそうだ。
このケーブルカーの開通は1870年世界で二番目に古い登山電車だ。当時は蒸気で動いていたが、今は電動だ。エッフェル塔より20年近く前にこのような乗り物が動いていたとは(エッフェル塔のエレベーターは1889年のパリ万博で人気を博した)、ハンガリーの歴史を知らない私には驚きだった。ハンガリーが独立戦争には負けたものの弱体化したオーストリアから内政権を勝ち取った1867年~第一次世界大戦までの期間、ハンガリーは空前の高度成長期でその成長はヨーロッパでも1番と言われていたのだそうだ。地下鉄もロンドンに次いで世界で二番目に開通しており、当時ロンドンは蒸気だったので電化した地下鉄としては一番と言える。豪華な国会議事堂や漁夫の砦、英雄広場が建てられたのもレヒネル・エデンが活躍したのも丁度この時期で、ブダペスト観光をすることはある種この高度成長期のブダペストを感じることとニアイコールになるのかもしれない。以前パリジ・ウドヴァルのところでも書いたが、ブダペストは新古典主義と世紀末建築が多く、ヨーロッパの首都というとローマを想像する私には随分新しい街に映った。建築史的に言うと、様式重視の時代から合理性・機能性を追求したモダニスムまでの僅かな期間に花開いた個性豊かで華やかな建築、それゆえなのか速やかに終止符を打たれ「断絶の時代」として切り捨てられた19世紀末の建築。中世と近代の間をたゆたう華やかで甘い、新しい時代への期待感と古い時代への郷愁を少々引きずったその独特な空気がなんとなく感じられる・・・。寒い地方の街はあまり好みではないと思っていたが、案外そうでもないと思い直すきっかけになった。
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