ドレクスレル宮殿(カフェ ドレクスレル)
オペラ座へ行こうと思ってアンドラーシ通りを歩いていたところ、オペラ座の向かい側くらいのところで改装工事中の建物に出くわした。随分綺麗なエントランスだなぁと思い、つい工事中のロープを超えて見学してしまった(すみません)。アンドラーシ通りは由緒正しそうな立派な建物の多い通りではあるが、この改装中の建物は古典的なアーチやヴォールト、繊細な装飾と一際目を引くものだった。これが何なのかはわからないが、なんだかとても得した気分になった。
旅行から戻って1年も過ぎた頃ブダペスト紀行の本を読んでいて、古いモノクロの小さな写真にふと目が行った。それはかつてそこがカフェだった頃の写真で、上品そうな紳士達が連続する美しいアーチとお洒落なライトの下で談笑したり新聞を読んだりしているのだった。なんか見たことある・・・。これは、あの改装中だった建物じゃないか?自分の撮った写真と見比べたところやはり間違いない。場所もオペラ座の前とあっている。そうなのか、あの瀟洒なエントランスはかつてカフェとして使われたものだったのか・・・。
実はこの建物、レヒネル・エデン若かりし頃の作品なのだそうだ。レヒネルが独自のスタイルを確立する10年ほど前とのことなので、三十代半ばの頃だろうか。アール・ヌーヴォーが花開く前のハンガリーではまずドイツで建築を学ぶのが通常であり、そのため首都ブダペストの建築も折衷主義・様式主義的なものであった。レヒネルもブダペストの工業高校卒業後ベルリン建築アカデミーに留学している。この作品は未だアカデミーの影響から逸脱しない、19世紀的折衷主義の中にある。レヒネルと言えば応用美術館や郵便貯金局しか知らない私には、レヒネルにもこういう時代があったのだということがとても意外であると同時に、これはこれで美しく魅力的だけど・・・と思ったりもするのだった。
ヴォールトの中心にあるライト吊り下げ部分(1番上の写真参照)の装飾に、僅かにレヒネルらしさが感じられる。
ファサード中央のバルコニー。ファサード表面はやはりタイルで覆われている。
ちなみに、かつてはカフェがあり、近年には国立バレエ学校として使われてきたこの建築は、今度は5ッ星ホテルに生まれ変わるのだそうだ。また、ブダペストを訪れることがあれば、泊まってみたいものである。
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コメント
こちらのブログでレヒネルさんのことを初めて知ったのですが、かなり興味を持ちました。
独自の才能を発揮する人ほど、初期は意外とちゃんとした(失礼)作品を残していたりしますね。
いったい10年の間にレヒネルさんの中で何があったのか、気になったりもします。
ところでヨーロッパの建物は、外観を保ったまま何百年も普通の生活の中で受け継がれていくものが多く、素晴らしいと思います。
投稿: 川 | 2008年9月 3日 (水) 07時29分
ドレクスレル宮殿から応用美術館までのレヒネルの10年の変遷は興味ありますよね。私もレヒネル・エデンという建築家はこのハンガリー旅行で初めて知ったくらいなんで・・・。そういえば1889年に建てられたトーネット・ハウスという建物を偶然にみつけたのですが、中世的なモチーフとタイルの装飾、パラペットの曲線などが折衷様式から独自性の時代への過渡期らしい感じの作品でした。よくわからないけど(笑)
おっしゃるようにヨーロッパは古い街並みがよく残ってますよね。やっぱり石の文化は違うなぁといつも思ってしまいます。一度そういうアパルトマンとかに住んでみたいですね。
投稿: ひなた | 2008年9月 4日 (木) 00時18分