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2011年8月

2011年8月 8日 (月)

ミレニアム ブリッジ

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2000年、イギリスでは来るべき21世紀を記念して様々な都市開発が行なわれた。1894年のタワーブリッジ以来約1世紀ぶりにテムズ川に架けられたこのミレニアムブリッジも、そうしたミレニアムプロジェクトの一つである。ドームやロンドンアイに並ぶプロジェクトの目玉となるもので期待も大きかったようだ。

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ミレニアム ブリッジはノーマン・フォスター、アンソニー・カロ、アラップ社の共同設計。2000年6月10日に竣工したが、横揺れが酷く振幅が7cmにも達したため危険として3日後には閉鎖されてしまった。ドームは企画が悪かったのか人気を得られず、ロンドンアイもトラブル続きであっただけに、イギリスでは大変な騒ぎになったらしい。日本でもニュースで報じられたので、私も何となくは知っていた。

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原因は横方向への剛性が低すぎる設計だったためということらしい。人が歩くことにより発生するほんの少しの横方向の力が、大勢の人が同時に歩くことにより橋に多少の横揺れを起こす。橋の横揺れと人々の歩調が同期し共振することにより、設計者の想定以上の大きな横揺れが発生したようだ。原因の究明と対策に約二年を要し、2002年2月に再開通した。

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ミレニアムブリッジは北のセント・ポール大聖堂、南のテートモダンと新旧のランドマークを繋いでいる。意外にアクセスの悪かったテートモダンがこの橋によってとても便利になった。橋の上から東にタワーブリッジも見え、ただ散歩するのも楽しい。

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歩行者・自転車専用の橋ということもあって、橋へのアプローチはは両岸ともスロープになっている。車椅子でも楽に渡れるバリアフリー設計。

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橋は浅いサスペンション構造。二つのY字型の橋桁が支えている。ノーマン・フォスターによるこの橋のコンセプトは「優雅な剣・光の翼」とのこと。シャープで軽く透明性の高いデザインで、歩行者のテムズ川への視界を上下に妨げないよう配慮されている。

余談ながら、セント・ポール大聖堂のあるシティの紋章は、セント・ジョージの十字架にセント・ポールの剣を組み合わせたデザインの盾をグリフィンが支えるというもの。もしかすると「優雅な剣・光の翼」というコンセプトは、このセント・ポールの剣とグリフィンの翼に因んだものなのかなぁと・・・。テムズ川の上がシティと言えるかどうかは知らないけど。

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2011年8月 1日 (月)

テート・モダン

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テムズ川南岸サウスウォークにあるテート・モダンは2000年にテート・ギャラリーから現代美術のコレクションを移してオープンした美術館だ。大英博物館のグレートコートやミレニアムブリッジ、ヘイズギャレリア等、ロンドンはこの2000年の前後に新しい建築が次々に建てられ、まるで建築バブルの様相を呈している。このテートモダンは中央の細い煙突が示すように元は火力発電所であったものをリノベーションし、美術館に転用したもの。設計はサー・ジャイルズ・ギルバート・スコット。1952年から1981年までバンクサイド発電所として操業していた。アールデコは大体1910年から30年代にかけてのスタイルであることを考えると、少し遅い登場である。

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リノベーションを担当したのはヘルツォーク&ド・ムーロン。日本の青山のプラダや北京の鳥の巣等の設計で知られるスイスの建築家ユニットである。このテートモダンが彼らの実質的な世界デビュー作品となった。ヘルツォーク&ド・ムーロンと言えば、スタイリッシュでユニークな外壁を真っ先に思い浮かべてしまうが、最上階にガラスボックスが付け加えられた程度でほぼ建設当時の姿で残されている。

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中へ入るとタービンホールと名付けられた吹き抜けの大空間に出る。発電所時代タービン室だったのでその名が付けられたのだそうだ。壁には剥き出しの鉄骨が並び、外観のトラディショナルな煉瓦壁とは対照的な印象。構造は鉄筋コンクリートだが、外観の装飾には伝統的なものを使用するケースはアールデコには多い(日本で言えば帝冠様式のような)。

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タービンホールにトップライトからの自然光が降り注いでいたのはインスタレーションの展示室だからかと思っていたら、他の展示室にも普通に窓があった。そういえばイギリスの他の美術館でも自然光が入っているものが多いなぁと思った印象がある。紫外線カットの技術がそれだけ進んだということなのかな。

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テムズ川の眺望が素晴らしい最上階のレストラン・バー。クリストファー・レンのセント・ポール大聖堂とノーマン・フォスターのミレニアムブリッジが正面に見える建築ファンには堪らない観賞スポット。もう少し右に行くと30セント・メアリー・アクス(同じくノーマンフォスター)も見える。この左側にレストランがあり、窓際の席でなくても眺望は楽しめなくもないが、窓を正面にして座れるバーの方がおすすめ。4階かどこかにテラス席のあるカフェ・バーがありそちらも気持ち良さそうだった。

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