旅行前・旅行後、楽しいのはどっち?(アムステルダム 新教会)
アムステルダム中央駅から賑やかなダムラック通りを南へ下がるとダム広場に出る。広場の西側にはルネサンス様式の王宮が威容を誇り、中央では様々なパフォーマーが観光客を楽しませている。この広場の西北側に今回私達に大きな衝撃を与えることになった新教会がある。
新教会は名前に反して歴史は古く、15世紀の半ば頃にはほぼ完成していたようである。ユトレヒトの司教がアムステルダムに二つ目の教区教会を許可したのが1408年(そのため以前からあったものを旧教会、後にできたものを新教会と呼び分けている)。この頃はアムステルダムの繁栄が始まった時期にあたり、豊富な資金がこの教会建設を可能にしたと想像される。この教会では代々、王(女王)の戴冠式が行なわれており、現在のベアトリクス女王もここで即位している。2002年には皇太子の結婚式が行なわれ、この教会の格式の高さが伺える。しかし、実際に入ってみると想像していた教会とは程遠いものだった。
新教会の内部はかなり雑然としていた。ウェディングドレスと思しきものがごちゃごちゃと展示されている。通常舞台裏に隠されているような台なども側廊に放置されていおり、美術館の展示準備中に足を踏み入れてしまったとうな感じだった。そんな状態だったから建築自体あまりよく見ることができず、雰囲気もよくない。しかも、そんな状態でありながら入場料は10ユーロとかなり高い。他の国で10ユーロ払えば、どれほどの質と量の美術品を見られるかということを考えるとこれは驚くべき金額だ。
ガイドブックをよく読んで見ると、この新教会はイベント会場として使用されているらしく、イベント開催時だけ入場でき、金額も催しによって異なるとのことだった。また、今回高価だった(内容に対して)入場料もミュージアム・イヤーリーカルトというパスを持っていれば無料か割り引きを受けられたようだ。やはり、ガイドブックをちゃんと読んでそれなにりに計画をたてないとダメだなぁと反省する。
毎回思うことではあるが、私も連れも旅の準備をすることが苦手だ。荷造りといった物理的な準備もそうだが、何処に行こうか何をしようかと計画を練ることも嫌いだ。その時間が一番楽しい時じゃないの?と人に問われ、そういうものかしらとふと考えた。
実は私は結構旅行前になると、マリッジブルーならぬトラベルブルーに陥ることが多い。本当にその行き先でよかったのか、家でぬくぬくしていた方がよかったんじゃないかとなんだか憂鬱な気持ちになってくる。エアの予約を取ってしまうまであんなに楽しみだったのに、この変わりようはナンなのか?自分でも不思議である。
沢木耕太郎が「旅の力」という本で、旅の準備は永遠の引き算をしているようだったと書いている。それは長く過酷になるであろう旅の持ち物の準備についての言葉ではあるが、なににつけ準備をするということは「永遠の引き算」なのではないだろうか。
私が準備が嫌いなのは生来の怠惰な性格故であることも確かだが、この「引き算」をすることが嫌なんじゃないかとも思う。エアを予約してしまうまで、私には色々な可能性があった。パリのパサージュでカフェオレを飲んでいる私も、クロアチアの国立公園でトレッキングをしている私も、ブダペストで温泉につかりながらチェスをしている私も、色んな私があり得た。その「沢山の可能性を持っている私」という状態が楽しいのである。だから、その中から一つに限定してしまった時点で憂鬱な気分が襲ってくる。あそこの方が良かったのでは、家でぬくぬくしていた方が幸せなのでは・・・と不安になってくる。
旅行の計画をきちんと立てるのが嫌いなことも、理由は同じだ。時間は限られているから、どこかに行けばどこかには行けなくなる。計画を立てることは、行けない所をどんどん引き算して行く過程でもある。
こんな風に書くと物凄くマイナス思考に見えるが、こんな私も旅立ってしまえば結局楽しい。実は帰ってきてからも楽しい。旅行中に見たことや感じた疑問について、自分なりに調べて知識を増やして行くことは非常に楽しい。そういうことならもっとこういう所も見ておけば良かったと思うことも多々あるが、またいつか行ってみようと次のモチベーションへ繋がるので問題ない。そうやって次の旅行が決まるまで、いつまでもふわふわと旅をしている気分でいられる。だから私について言うならば、旅行前より旅行後の方が断然楽しい。
さて、今年もいよいよ終わり。年末になって毎年思う。何故こんなに使ってないものがあるんだろう。昨年も断捨離したはずなのに。生活をして行くことにあまり沢山のものは必要ないとわかっているのに何故かどんどん増えていく。「引き算」が苦手な影響は日々の生活にも顕著に現れる。来年こそは断捨離元年になりますように・・・。
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