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2013年1月18日 (金)

シント・ニコラース教会と薔薇の名前

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最初に断わっておくが、アムステルダムのシント・ニコラース教会とウンベルト・エーコの小説「薔薇の名前」はもちろん何の関係もない。まずは普通にこの教会の話から・・・。

アムステルダム中央駅東南、ヘンドリック河岸に面してたつシント・ニコラース教会。船乗りの守護聖人聖ニコラースはアムステルダムの守護聖人である。12月5日の「聖ニコラースの日」はオランダではクリスマスに並ぶ大事なお祭りの日なのだそうだ。

1887年A.C.ブライスの手により完成されたシント・ニコラース教会は、カトリックの教会であるにも関わらずネオバロックとネオ・ルネサンスの折衷様式でつくられている。。1815年にカトリックの礼拝が認められて以来、カイペルスの建築に代表されるように19世紀オランダのカトリック教会はゴシックが最も適した様式とされていた。このシント・ニコラース教会はかなり珍しい例と言える。バロック様式の双塔やドームは堂々としており、この建物に落ち着いた威厳を与えている。その一方、大きすぎるバラ窓は中世キリスト教建築のようでもあり、ラテン十字のプランも古典様式にしてはほっそりしすぎているようにも見える。これが北方の古典なのだろうか。イタリアの古典建築とは少々趣が異なる。

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シント・ニコラース教会の内部はカトリックだからか、アムステルダムの教会の中ではかなり豪華で見ごたえのあるものとなっている。写真NGなのが残念だ。

内部は三廊式のラテン十字プラン。トランセプトの張り出しはごく僅かである。トンネルヴォールトの格天井が落ち着いた色合いで美しい。水平に走るリブはぶつ切りにされたエンタブラチュアに落ち、下のピラスターへと繋がって行く。ルネサンス建築には珍しく装飾と構造の一体感が生まれている。

この教会で最も目を引くのは、交差部にかかるドームである。金の装飾が施された華やかなペンデンティブから目暗アーチが二重に張り巡らされ、その暗い帯の上で青いステンドグラスが煌めいている。それは、思いがけなく見つけた空のようでもあり、シュジェの求めた神の光のようでもある。外から見たところ石造のドームにしか見えなかったのだから、その驚きは猶更である。一体どうなっているのだろうと外観を再度確認してみると、内部と外部ではドームの高さが異なることに気が付いた。つまり二重殻ドームだということである。

外殻のドームはドラムが異常に長い。この長いドラムの中に内殻ドームが隠されており、ドラム上部のクリアストーリーとドームのドーマー窓からふんだんに光が注ぎ込まれるようになっている。これがキラキラ輝くステンドグラスの理由である。二重殻ドームというと一般的にはドームの高さやスパンに対する強度をあげるための解決策として使用される例が多い。サンタ・マリア・デル・フィオーレ(フィレンツェ大聖堂)はその最初の例だろうし、時が過ぎるとロンドンのセント・ポール大聖堂やパリのパンテオンのように三重殻のものも出てくる。しかし、このようなトリッキーな効果を出しているドームは少ないのではないだろうか。

この輝くドームの仕組みがオリジナルからあったのかどうかはよくわからない。1999年に復元がなされているので、その時点で施されたものかもしれない。身廊の柱の装飾もモダンな(建築的でなく一般的な意味の)印象を受けるので、完全に忠実な復元というわけではなかったのだろうと思うが…。

■内部の写真は下記URLで

http://www.nicolaas-parochie.nl/index.php?menu=2&page=9

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ところで、この教会は先にも書いたようにカトリックのものなので聖母マリア像が置かれているのだが、このマリア様、手には可憐な薔薇のつぼみを持っていらっしゃる。

マリア様と言えば純潔の象徴ユリが定番と思っていたので調べてみると、薔薇もマリア様の象徴だということだった。なんでもアヴェ・マリアの祈りに使う「ロザリオ」はラテン語の「ロサーリウム(薔薇の園)」から来ているのだそうだ。ウンベルト・エーコの小説「薔薇の名前」のタイトルは、聖母マリア様を暗示していたのだと納得。

映画では登場人物の女性のことと明かされているが、小説では薔薇に対する言及は二度ほどしかなく、何故このようなタイトルがついているかよくわからないと思った日本人は私だけではないはず。西欧文化の中にいれば理解していて当然のことなので本文で触れられていなかったのだ。確かに聖と俗の二面性を兼ね備えた聖母マリアは小説のテーマにしっくりくる。元来無実のはずの登場人物の女性が魔女として裁かれてしまうのも、聖母マリアの息子の運命を暗示しているようでさらに納得。異なる文化の小説を読むのは本当に難しい・・・。

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