バターシー発電所
知人に教えてもらったロンドンのオススメ建築、バターシー発電所(バタシーとも)。このあたりの年代と地域に疎い私は知らなかったが、イギリスのアール・デコを代表する有名な建築なのだそうだ。設計はサー・ジャイルズ・ギリバート・スコット、1933年の作品である。S.G.G.スコットは代々建築家の家系で、イギリスの大建築家サー・ジョージ・ギリバート・スコットは彼の祖父にあたる(セント・パンクラス駅の設計者、ゴシック建築の復元にも功績がある)。サー・ジャイルズ・ギリバート・スコットの作品としては、現在テート・モダンとして知られるバンクサイド発電所やリヴァプール大聖堂、ケンブリッジ大学図書館等があり、1930年代という伝統主義と近代主義が対立する中で常に中立の立場で安定した作品を残したと評価されている。身近なところでは、ロンドンの赤い電話ボックスも彼の設計である。
階段状のシルエットや表面のシャープな凹凸感がアールデコらしい。
屹立する4本の白い煙突にはフルーティングが施され、神殿跡のような印象を与える。アールデコの装飾には古典的建築要素を単純化したり、幾何学的に再構築したものも多く使用される。この煙突のフルーティングは凸面が用いられているが、古典のオーダーではフルーティングは凹面のものが多い。
バターシー発電所はアビィロードと並ぶロンドンにおける音楽ファンの聖地。ピンクフロイドのアルバムジャケットに使用されているためで、私が見に行ったときもファンらしき人を数人見掛けた。上の写真は線路を跨ぐ橋の上から見たところで、塀が高くて上部しか見えないが件のアルバムジャケットはこの辺りから撮影されたものと思われる。私が現地で出会ったカップルは近くの(と言っても覗き見ポイントからはかなり遠い)スーパーに踏み台を調達に行っていた。
サー・ジャイルズ・ギリバート・スコットの赤い電話ボックスは、海を渡りマルタ共和国でも使用されている。マルタはナポレオンに侵略されフランスの属領にされた折、英国のネルソン提督に援助を要請。その後160年英国に統治された歴史を持つ。この電話ボックスもその名残と思われる。上の写真は首都ヴァレッタの電話ボックス。S.G.G.スコットの電話ボックスは、ヴァレッタでもロンドンでも観光客の記念撮影スポットとして人気を集めていた。
バターシー発電所への最寄り駅は、Vicotoria駅、Pimlico駅、Vauvhall駅.。ピンクフロイドファンでなければ、Pimlico駅から川沿いにチェルシーブリッジあたりまで散策されるのがお勧め。発電所は現在改修工事中らしく周囲は高い塀で囲まれ、川を渡って建物に近づいても殆ど見えない。
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