マグナ・プラザ
アムステルダムにはいくつか見てみたい建築があったが、マグナ・プラザというショッピングモールもその一つだった。ダム広場から王宮と新教会の間を西へ抜けると、正面にその豪華なファサードが見えてくる。交互に赤と白を配したオランダらしい華やかさと、繊細な装飾が印象的な二つの塔.。設計者のペーテルスはネーデルラント・ルネサンス様式を参照したというが、それはフロアを仕切るコーニスや窓の形に表れているものの、建物のシルエットや表層を覆う装飾は見る者の視線を垂直方向へ奪い、最終的にゴシック的印象を強く残す。
マグナ・プラザは19世紀の郵便局を改修したものだ。設計はC.H.ペートルス、1899年の作品だ。ほぼ1世紀の間郵便局として使用され、1993年にショッピングモールに転用された。
中へ入ると3階吹き抜けの大空間が待っている。四方を美しいギャラリーと砂岩のアーケードが囲む。王宮の裏にあるためか、しばしば「王宮より豪華」と比較の対象になるが、その内部はむしろロマネスクの修道院のような静かで安定したムードが支配している。外観とのギャップに少なからず驚かされる。
二色使いの連続アーチは形の違いはあれどコルドバのメスキータを彷彿とさせるが、この時期のオランダでよく使われた装飾のようだ。円柱は上階に上がるにつれ細く軽くなり、全体に安定感を与えている。柱間のスパンも変わるためアーチの形状も変化を見せる。これらの円柱やアーチは改修時に新しく付加されたものもあり、それらは改修工事期間の短縮を図るため(おそらくは費用の削減も)、鉄骨に予め設計当初の柱と調和するように準備したコンクリートを被せたものを使用している。近距離でよほど注意して見ない限り殆ど気付かない。
ガラスのドームは19世紀のオリジナル。
このような歴史的な建築物の中にも近代的でスタイリッシュなエレベーターが設置されいる。
マグナ・プラザの建築様式についてイギリスの国会議事堂と同じネオゴシックとする記事が散見されるが、建築の第一印象だけに頼った少々乱暴な見方かもしれない。中世キリスト教建築と古典主義建築を折衷するこの時期のオランダの気分は、イギリスのリチャード・ノーマン・ショウが好んだフリークラシックスタイルに通ずるものではないだろうか。
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