ベルギー

2011年6月 9日 (木)

アントワープ中央駅

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ニューズウィークの選ぶ世界の素晴らしい駅第4位、ベルギーのアントワープ中央駅。折衷主義のネオルネサンス様式でデザインされた宮殿のような駅だ。1998年から通過式の構造にするためリノベーションされた。最初の通過列車は2007年3月に運行し、私が行った2010年には工事は既に終わっていたように見えた。

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設計はLouis Delacenserieというブルージュの建築家。同地のゴシック建築の復元に功績があった。彼のオリジナルとしてはこのアントワープ中央駅(1895~1905)が代表作になる。本人はゴシック建築に精通していたようだが、最初の師が新古典主義の建築家であったらしく、彼も初期の肩書きはそのように名乗っていたようだ。この駅舎が新古典主義で建てられたのもそのキャリアあってのことだろう。一方、鉄・ガラスの素材や色の使用等アールヌーヴォーの影響も濃く、柔軟で進取の気性に富んだ建築家だったのだろうと想像する。

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ガラス部分はクレメント・フォン・ボガード。

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ドームの形は少し変わっている。

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ホームへの入口。上から二番目の写真の裏側にあたる。

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チケットブース

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駅のホーム。何よりかっこいいのは、ホームが大きく2分割され、縦4層に折り重なっているところだ。写真は、第一層に電車、二層にはショップと通路、三層にまた電車が入っている。そしてこの更にもう一層下にもホームがある。これと同じものがもう片側にもあり、その真ん中を階段とエスカレーターが通っている。かなりスタイリッシュで、鉄道ファンでなくともワクワクさせられる光景だ。

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第四層ホームの出口表示。

私はニューズウィークの選んだ第一位であるロンドンのセント・パンクラス駅よりかっこいいと思う。このときアントワープを訪れた第一の目的はこの駅を見るためだったが、セント・パンクラスを見るためにロンドンへ行こうとは思わない。西洋人からするとこのような折衷主義の建築はあまり珍しくはないということなのかもしれない。このあたりの感覚は日本人とは大きく異なるのだろう。いずれにしても、リノベーション前のレトロな建築も後のスタイリッシュなホームもどちらも楽しめる秀逸な駅であることは間違いない。

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2010年9月 3日 (金)

楽器博物館

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去る8月22日、阪急百貨店四条河原町店が閉店した。生活感を排除するためトイレ表示を出さないという、少し変わった百貨店だった。価値のわかる人だけが来ればいいのよといったお高くとまった雰囲気の店であった。よく言うと媚びることを良しとしない潔さを持った百貨店でもあった。報道陣を含む沢山の人とともに最後のシャッターが下りるのを見届けた。最近の阪急には先に書いたようなポリシーはすっかり消え失せ別の店のようになってはいたが、これで名実ともに姿を消したことになる。どれだけの人が店の閉店を惜しんだかはわからないが、一つの時代が終わったような淋ししさはあった。建築ブログに何故こんな話を書いているかと言うと昨年末ブリュッセルの楽器博物館を訪れた折、四条河原町阪急に雰囲気が似ているなぁと思ったからだ。

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楽器博物館はモンターニュ・ドゥ・ラ・クール通りの中程にある。中央駅や王立美術館が周囲にあるため、ブリュッセルに滞在すれば何かと通ることの多い坂道である。鉄とガラスでできた一風変わった外観は特にアール・ヌーヴォーに興味がなくとも一際目を引く。設計はサントゥノワ、1898年に完成したファサードには建築当時のこの建物の名前「オールド・イングランド」の大きな表示が残っているが、今ではその表示の由来を知る人も少なくなったようだ。。「オールド・イングランド」は婦人洋品を扱うデパートだったが、後に楽器博物館に転用された。

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大々的に博物館の表示がされていないのでわかりにくいが、窓の下には楽譜の装飾が施される。

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内部に入ると鉄とガラスでできた階段とエレベーター。早く見に行きたい気持ちははやるが、まずはカウンターで館内案内を渡され周り方を説明をされる。ヘッドフォンを指差しながら「コメントはなし、音だけ」と静かに告げられる。この楽器博物館は所蔵品7000点を超える世界でも有数の博物館で、そのうち1500点を楽器の種類別に展示している。ヘッドフォンをつけて展示室内のマークのあるところに立つとその楽器の音が聞こえてくる。音の聞こえる範囲はそう厳密ではなく、歩いていると自然に音が入ってくる。まるで五線譜の中を散歩しているようだ。特にアール・ヌーヴォーの階段やバルコニーの手摺は五線譜を想像させるところがあるので、聴覚的にも視覚的にもメロディの中に取り込まれているような感覚に陥る。

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展示の仕方も洒落ていてデートにぴったりと思ったが、家族連れが多かった。こうして子供の頃から様々な楽器に触れることのできる環境が身近にあるところがとても羨ましい。ただ、あまりにも展示数が多くて、最初は沢山いた来館者が階を上がるごとに減っていくのが、少しおかしかった。

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階段の踊り場。いかにも元デパートだっただろうと想わせる空間。何だかとても懐かしい感じがする。こんなに洒落てはいなかったが、かつての四条河原町阪急にもこういう世紀末の百貨店が持つような空気感があった。

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階段の手摺が優美な影を落とす。

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最上階にあるレストランは、ブリュッセルの街を見下ろすことの出来るオススメのスポット。1階のチケット売り場で言えば、レストランだけの利用もできる。アール・ヌーヴォーらしい窓の装飾も洒落ている。約100年前のオープン当初も展望台として人気を博していたらしい。

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夜の楽器博物館は中から光を発する巨大なBOXに変わる。ガラス窓前面に吊るされた小さな無数の電飾は夜は光の壁となり、昼間存在感を誇っていた鉄の柱部分は夜の闇に姿を消す。昼と夜でまるでポジとネガのような効果を発揮するのは、この時代には珍しい大きなガラス窓のせいだ。暖かな色の光の壁にアール・ヌーヴォーの柱が影を落とし、オフィスビルにはない幻想感を与えている。当時最先端であっただろうガラスの建築は今はノスタルジーに変わる。

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2010年3月27日 (土)

メトロ オルタ駅

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地下鉄オルタ駅で、いかにもオルタらしい曲線の柵を見つけた。ブリュッセルの地下鉄もパリのように駅ごとに異なるデザインが施されているようで、オルタ駅にはオルタらしいアイアン・ワークが飾られている。

今は取り壊されてしまったが、かつてはオルタの人民会館がこの付近にあった。その人民会館の一部がこの駅に保存されていると聞いていたが、これがそうだろうか。後で調べてみると、最上階と屋上バルコニーの手摺に使われていたもののようだった。上段の横長のプレートは当時のショップかなにかの看板のようである。

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ヴィクトール・オルタは世界最初のアール・ヌーヴォー建築を建てた人である。才能とパトロンに恵まれ、若い新進の建築家だったオルタにはブリュッセルのブルジョア階級からの依頼が引きをきらなかったという。

一方人付き合いは苦手で後進の育成は殆ど行なわなかったようだ。そんな社交性の欠如のせいもあったのか、後年オルタの才能に嫉妬していたヴァン・デ・ヴェルデに彼のパイオニアとしての役割を否定され、多数のオルタ建築が取り壊しの憂き目にあってしまった。人民会館もその一つである。オルタファンとしては許しがたい行為であるが、長い建築の歴史の中では何度も繰り返されてきたことではある。建築が存在し続けることは色々な意味で難しい。

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それでもこうしてメトロやカフェ(アントワープにある)に建物の一部が生かされているここともあるし、最近人民会館が復元されると言う話も聞いた。ベルギーではやはりオルタは愛されているし、大切にされている。現在モノクロ写真でしか見ることのできない人民会館が実際に姿を現すのはいつ頃だろうか。とても楽しみだ。

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