日本

2011年6月27日 (月)

大阪駅

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2011年5月リニューアルされた大阪駅。正直なところあまり興味はなかったけれど、大阪に用事が出来たついでに立ち寄ってみた。駅ビルの基本設計はスカイツリーやポーラ美術館の日建設計、駅舎屋根はジェイアール西日本コンサルタンツ。

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ホームのエレベーターを上がり改札を出るとガラス張りの連絡通路に出る。これがオープン前高らかに宣伝されていた橋上駅舎というものか。眼下にホームが見えて結構かっこいい。古いホームの屋根がなければ、ロンドンのパディントン駅のような眺望が得られたんじゃないだろうか。残念・・・。

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大屋根の下、ホームと二階改札のある連絡路。そして古いホームの屋根。

古いホームの屋根が外せないのは簡単な話、雨が入り込んでしまうからだ。当初は両端の数メートルを残し全て撤去する予定で、南北の連絡路(2階の改札や時空の広場)からジオラマのように電車を見下ろせるということを売りにしていたらしい。本当にそんなこと思ってたのかなぁと不思議に思った。

建築については全くの素人なのでよくわからないけれど、パースを見た時点で大屋根だけでホームがフォローできるようには見えなかったし、駅自体の機能改善はおまけで新しいショッピングスポットをつくりキタの集客力強化を図ることに全力を尽くしているようにしか見えなかった。大体JRがHPで謳っている「南北へのアクセスの良さ」については、大阪は地下が発達しているので、もともと不便に感じたことがない。むしろ新しい駅ビルを造ったことにより必要になった通路ではないかとも思う。

私が最初に興味がなかったと書いたのは新しい商業施設が出来るという程度の認識しかなかったからで、割り切れているならそれはそれでいいのではないかと思っていた。もともと日本人は機能とデザインを両立させるのが苦手・・・というかその必要性を感じてこなかった民族なのではないだろうか。今後眺望のためにこの古いホームの屋根をどうするか検討されていくようだが、いっそのこと「もとからそんな気なかってん」と言いきって欲しいような気もする。「商売さえ上手くいったらええと思っててん!」と。駅ビルが繁盛すれば電車の利用客も増える。これは大阪を代表する商人の一人、小林一三の考え方でもある。それならそれで大阪らしくて良いと思うが、ヨーロッパの駅のような素晴らしい眺望も念頭においての改修だったとしたら・・・なんとも残念なことだ。

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「時空(とき)の広場」を階段下から見上げる。空港みたいと評判の空間。

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ヨーロッパの駅というより空港のイメージなのは、トンネルヴォールトではなく片流れ屋根を採用したから?

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「時空の広場」の南北には金と銀の時計

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おもちゃみたいな時計を公共の場に置こうとする子供っぽい感性は頂けない。材質と色が悪すぎる。ヨーロッパの駅の時計を意識したデザインであるだけに、安っぽさが目立つ。空港のようと言われる空間が台無しだ。こだわりきれないなら、機能性重視の飾り気無い時計の方がよかった。こういうディテールが意外に大事だったりするのに・・・。

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2009年10月22日 (木)

京都府立陶板名画の庭

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京都北山、植物園と接する一画に京都府立陶板名画の庭がある。1990年大阪で行なわれた「国際花と緑の万国博覧会」でダイコク電機のパビリオンを飾った陶板画4点に新たな4点を追加して展示したものである。オープンは2004年、万博のダイコク電機パビリオンと同じく安藤忠雄の設計である。

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陶板画は、原画を撮影したポジフィルムを下に写真製版技術により陶製の板に転写し焼成したものである。陶板ゆえに水の中に揺らめくモネの睡蓮もあり得る。

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奥の緑が植物園との境になっている。この植栽までは名画の庭の敷地らしい。ここに緑が見えるだけで、随分と爽やかな気持ちになる。、

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狭い矩形の敷地を地下二階まで掘り下げ、階段状に水盤を設置し、その水盤を展示スペースとしている。長軸方向と対角線上を細いスロープが横切り立体回遊式の「庭」を形造る。中に入ってスロープを歩いていると入口で拍子抜けした敷地の狭さも感じられなくなって行く。天井のない開放感のせいなのか、歩を進めるにつれ変化して見える周囲の様子のせいなのか。

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ミケランジェロの実物大「最後の審判」にはスロープを歩いている間に3度出会うことになる。システィーナ礼拝堂の壁を飾っているだけにその大きさは半端ではないが、ここでならそれぞれの目の高さでよく見ることが出来る。よく出来た仕掛けだと思う。

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奥に見えるのは、スーラ、ルノアール、ゴッホの3点。モネと合わせて4点が印象派というのは随分偏った選択だと思うが、日本人好みといったところ?

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空中にテラス状に張り出すスロープ

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階段状の水盤の段差部分が滝になっているため、中を歩いている間中、水の音が絶えない。そのためなのか北山通に面しているにも関わらず車の音は殆ど聞こえず、街中にいることを忘れてしまいそうになる。マイナスイオンも一杯な気がする。そもそも「名画の庭」はダイコク電機の女子社員が名画を青空の下で見られたら気持ちいいかも、という一言から生まれたものだそうだ。行ってみるまでは絵なんて別に何処で見ても一緒だし、ましてや本物でもないものを・・・と思っていたのだが、実はなかなか爽やかで気持ちがよく自分の思い違いに気付かされてしまった。また来たいかも・・・。

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2009年9月27日 (日)

兵庫県立美術館

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兵庫県立美術館は2002年にオープンした関西では比較的新しい美術館だ。阪神・淡路大震災からの「文化の復興」のシンボルとして建てられたもので、被災した兵庫県立近代美術館のコレクションを引き継いでいる。設計は安藤忠雄、延床面積約27.46㎡と西日本最大級の規模を誇る。大きな3つの展示室が並び、後方の海へと繋がる広場(なぎさ公園)までが安藤忠雄の設計。コンクリートの打ちっ放しの箱をガラスで囲うデザインは最近の安藤建築では御馴染みのスタイルだ。

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「海のデッキ」から展示室を臨む。大きなキャノピーが特徴的。

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「風のデッキ」への階段

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「風のデッキ」海から山へと抜けた空間

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「円形テラス」

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常設展示室への大階段。石切り場のような潔さ。

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「海のデッキ」からの眺め。

この美術館、見た目は単純明快な構成なのだが、実際に歩いてみるとどこがどこへと繋がっているのか少し迷う。そうした一筋縄で行かないところも美術館を愉しませる一つのやり方なのだとは思うが、これは結構好みが分かれるところではないだろうか。率直に言うと、私は建築が前に出すぎているような気がして少し疲れるなぁという気がした。何と言うのか、一部のバロック教会のようなこれ見よがしのいやらしさを感じるのだ。どちらかというと、ロマネスク・シトー派教会に近いストイックな建築であるにも関わらずである。そもそも美術鑑賞は結構疲れる。展示室を出ればほっとしたり、爽やかな開放感を感じたりしたい。この美術館は展示室を出てもまだ、その建築のボリュームの中に取り込まれている感じがして閉塞感が残る。良くも悪くも、建築の主張が強いのだろうと思う。パンフレットやHPに建築の見所を一つ一つ写真つきで紹介しているのも、私はあまり良いとは思わない。確かに建築好きとしては、誰がいつどんな意図でこれを建てたのか、美術館建築としてどのような工夫がされているのかといったことは知りたい。記載してもらえると嬉しい。しかし見所を紹介するのは少し違う。ここにいると何となく気持ちいいとか楽しいとか、そんな風に訪れた人が自然に感じられるというのがいい。よい美術館建築とは本来そういうものではないのか。美術館は展示作品や所蔵品が主役であって、建築は主役になってはいけないのである。

以前の安藤建築にはそういう良さがあったと思う。京都洛北にあったケーキハウスも高瀬川沿いのタイムズビルも出来た当時学生だった私は本当によく利用していた。そこのケーキがおいしかったからとか、そのビルに好みのショップが入っていたからとか、利用する理由は勿論あったけれど、その空間でお茶を飲みたい、寛ぎたいと思う気持ちも確かにあったのだ。建築が「安藤建築だから」ではなく「この素敵な建物は安藤忠雄という建築家が作ったのね」という風に感じられる丁度良い感覚。有名になり過ぎたためなのか、最近の安藤忠雄の美術館にはその感覚が前後しているように感じられるものが時々ある。古くから安藤建築に慣れ親しんだ一建築ファンとしては何だか少し残念に思うのである。

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